海外で美容師をしていると、日本と比べて言われることが多いのが「お任せ(Up to you)」や、「あなたはどう思う?(What do you think?)」。
髪質やファッション、文化も違う海外のお客様に言われて言葉に詰まってしまう美容師さんは多いのではないでしょうか?
この記事では、外国人のお客様からのお任せオーダーや、あなたはどう思う?と聞かれた時の対応方法を初心者向けの英語とともにまとめています。
日本人美容師がお任せオーダーに困る原因
ただでさえ新規のお客様からのお任せは困るもの。
それに加えて慣れない髪質や骨格、日本と違ったファッションやメイクをした人にどんな髪型が似合うか聞かれてもすぐにアイディアが出て来ないのです。
また、日本では美容室に割とオシャレをして来る人が多いですが、オーストラリアでは美容室にジム帰りの服装のまま来たり、ほぼ部屋着のようなラフな服装で来る方も珍しくないので、お客様の本当の好みがわかりにくい!
そして日本ではお客様の理想とする女性像をキュート、エレガント、グラマラス、カジュアルなど大まかにタイプ分けすることもありますが、海外では普段はほぼスッピンにTシャツ、レギンスなどのカジュアルな感じでもお出かけとなるとタイトなドレスにフルメイクで大変身、という人もたくさんいるので、タイプ分けするのも難しい!
髪型を提案する前にお客様にいくつも質問する必要があります。
カットのお任せオーダー対応のコツ
一度切ったら戻せないカットはお客様の生活スタイルも聞きながら好みを探っていきます。
結べる長さか結べない長さか
カット前が結べる長さの場合、普段髪を結びたいのか結びたくないのかを聞きます。
英語では「Would you like to tie your hair after hair cut?」(カット後も髪を結びたいですか?)
と言い、この質問で切ってもいい範囲を探ります。
レイヤーを入れると結んだ時に前の毛が出てくる長さの場合は、そのことも伝えます。
英語→「If I cut layer, you can’t tie everything. You will need pins to hold front hair.」
(レイヤーを入れると全部は結べないので、前の方を止めるためにピンが必要になります)
ジムに行く人が多いオーストラリアでは、ジムの時だけは結びたい、または結ばなくてもうっとおしくないくらい短くしてほしいという人が多いので、ライフスタイルを探るのはとても重要です。
普段のスタイリング方法
日本人よりもドライヤーやアイロンの使用率が低いオーストラリアでは、スタイリングをする前提でカットすると、お客様が家で大惨事になることがあるので注意しましょう。
普段のスタイリング事情をカウンセリングの時に聞きます。
「How do you style your hair ?Do you use hair dryer?」(普段どんな感じでスタイリングしますか?ドライヤーは使いますか?)
「Do you use hair straightener?」」(ストレートアイロンは使いますか?)
Straight iron(ストレートアイロン)よりも、Straightnerの方が現地の人が良く使い、商品名にも Hair Straightener(ヘアストレートナー)と書いてあることが多いです。
スタイリングをほとんどしない方の場合は軽いスタイルを提案するとまとまりが悪くなることがあることも伝えます。
でもレイヤースタイルの方が似合いそうな場合の伝え方はこちら。
「Layer style is suit your face shape ,but your hair will be easier to become messy if you don’t use hairdryer.」(レイヤーのスタイルがお顔の形には合うのですが、ドライヤーを使わないとまとまりが悪くなります。)
似合う形がいいか、お手入れが簡単な髪型がいいのかお客様に選んでもらいましょう。
スタイリングをほとんどしないお客様に似合う髪型をポジティブに伝えたい場合は、「I can teach you how to style easiest way.」(一番簡単なスタイリング方法を教えますよ。)
など言ってみて、お客様のスタイリングに対する不安を取り除いてあげることもできます。
写真を見せて好みを探る
本当に何でもいいという人にはいくつか写真を見せてみましょう。
これは嫌い、というものが見つかると思うので、まずは嫌いなものを避けてさらに髪型を検索します。
大体の好みが絞れたら同じような雰囲気の髪型を再度検索します。
「ミディアム 顔周り レイヤー 黒髪」など、キーワードをいくつか入れるのがポイント。
そして日本のヘアカタログは巻いてあるスタイルも多いので、直毛の人には直毛というキーワードを入れて検索すると、カットだけの状態の雰囲気が分かりやすく伝わります。
スタイルチェンジした時のデメリットも伝える
お任せオーダーをする人の中には、雰囲気を変えたい人もたくさんいます。
そして海外のお客様は半年から1年ほど髪を切っていない人もしばしば。
長い間髪を切らないでいると髪は重くなり、レイヤーがあまり入っていなければそれなりにまとまりやすいこともあるので、長さをある程度切ってスタイルチェンジした場合、髪が軽くなるので癖が出てきてまとまりが悪く感じることも。
また、前髪を作る場合も直毛でアイロンも使わない方の場合、結構短くしないと目にかかってしまうこと、前髪をキープするなら1~2か月に一回はカットが必要ということを伝えます。
そしてお客様が切った後の姿をイメージできていない場合も大いにあるので、写真の通りに目にかかるくらいの長さに切ると、実際の生活では邪魔になるからもっと切ってほしいと言われ、切ると生え癖によっては浮きやすくなるなどもデメリットも考えられるので、切ったらどうなるかの予想を立てて起こりえるデメリットを伝えておくのは大切です。
ヘアカラーのお任せオーダーの対応
なかなか難しいヘアカラーのお任せもいくつかの質問でお客様と一緒に決めていきましょう。
髪の毛の履歴を聞く
セルフカラーや日系サロン以外の多店での施術など、海外のお客様は履歴も複雑なことが多いです。
一見バージン毛に見えて1年前にかなり暗めの色を入れていたり、フロントのみのセルフ白髪染め、ブリーチ毛に黒染めなどの見えにくい履歴も注意深くチェックや質問をし、できる限りの履歴を聞き出したうえで今回可能な色を提案しましょう。
カラーチャートを見せて今の状態と、今回可能な色味を見せて好みを探ります。
できる色が限られると大体の方が「これは好きじゃない」など好みを言ってくれます。
寒色系か暖色系か好みを聞く
履歴がシンプルでどんなカラーでもできそうな場合、暖色か寒色の好みを聞きます。
分からないと言われた場合、肌の色が青みががった感じであれば寒色系、黄身ががっていたら暖色系をおすすめするとお肌の色と馴染んで気に入ってくれる確率が高くなります。
Your skin tone is bluish ,I recommend Ashy colour.(あなたのお肌の色味は青みがあるのでアッシュ系の色をおすすめします)
肌の色がよく分からない場合は、普段の洋服やバッグを選ぶときはどんな色を選びますか?と聞いてみます。似合う色が分からなくても無意識によく選びがちな色があるので、それを参考に好みを探ります。
少しでも白髪がある場合はカバーしたいか聞く
白髪がほとんど無い方でも白髪を気にしている人はいるので、白髪が気になるかは必ず聞きましょう。
明るめのカラーにする場合、多少の白髪は目立たなくなりますが隠れるわけではないことを伝え、色味優先か白髪をカバーすることが優先か聞いてみます。
You have little bit of gray hair, would you like to cover?(白髪が少しありますがカバーしたいですか?)
If You get brighter colour ,gray hair will be less ovbious than now. But doesn’t mean it’s coverd.(髪色が明るくなったら白髪は今よりは目立たなくなりますが、白髪が隠れるわけではありません。)
アッシュ系で白髪をカバーしたい場合、白髪染めを混ぜるとアッシュ系の色味が弱くなるのでアッシュを混ぜてもあまりアッシュ感が出ないことも伝えましょう。
To cover the gray hair, I need to mix gray coverage product with Ash colour.
Result will be less Ashy and will be wormer colour.(白髪をカバーするためには白髪染めをアッシュ系のカラーと混ぜるのでアッシュ身は弱くなり、少し暖色よりの色味になります。)
髪を染める頻度を聞く
お任せオーダーの方の中には、カラーを頻繁にしない方も多くいます。10レベル以上のカラーをした場合、半年カラーしないとものすごくプリンになるので、頻繁に美容室に来ないようなら先のことを考えて明るすぎないカラーをおすすめするなどするとと信頼度が高まり、リピート率アップに繋がります。
明るいカラーをおすすめしたい場合は2、3か月後の明るさの予想をお伝えして次の来店周期をアドバイスしてあげるとリピートしてくれやすくなります。
お客様からのWhat do you think?の対応
初対面のお客様からの What do you think?も意外と困るもの。
どんな方向におすすめしていいか分からない場合、次の方法を試してみて下さい。
まずは肯定する
お客さまがやってみたい髪型の写真を持ってきて、この髪型をやってみたいけどどう思う?と言われた時、その写真がかなり独特の髪型だったり、髪質的に難しそうなときが多々あります。
対応のコツは、まずはその人の感性を肯定すること。
そして、その髪型のどこが一番好きなのかを聞きます。
Looks good! Which part do you like the most?(いいですね!どの部分が一番好きですか?)
案外前髪のみだったり、巻き方やスタイリングが好きなだけだったりもします。
施術後の未来を説明する
What do you think? の質問には、似合うかに合わないか、いい髪型かどうかだけの回答でなく、次回来店までの経過の予測も伝えます。
退色が気になり始める時期や髪がまとまりづらくなってくる時期が次回の来店周期なので、家でどんなお手入れが必要か、その髪の状態で必要なお手入れを施術前に伝えます。
髪をスタイリングするハードルが日本人よりも高いので、どんなスタイリングができるかお客様とも相談して決めていきます。
まとめ
経験豊富な日本人の美容師さんでも最初は苦戦するUp to youや What do you think?の質問。
聞きたいことさえクリアにできればお客様に最適でかつ自分らしい最適な提案ができるようになります!
海外でカウンセリングに苦戦している美容師さんはぜひこの記事を参考にしてみて下さい。
最後までお読みいただきありがとうございました。